命令用法の実際
RETURN HOME UP ADVANCE

  Japanese Font Encoded

HOME
UP
直3現在複命令の例

HOMEポルトガル語 > トピック > 「命令用法」の実際

「命令用法」の実際

例: 「止まれ」(parar

文法的に正しいと言われる体系

  丁寧な命令・依頼

(接続法現在)

強い命令・または親しい者への命令

(命令法)

否定の命令

(接続法現在)

標識

(不定法)

単数 Pare Para Não pare Parar / Não parar
複数 Parem Parai Não parem  
勧誘 Paremos   Não paremos  

ブラジルでの慣用体系

  丁寧な命令・依頼

(接続法現在)

強い命令・または親しい者への命令

(単数は命令法と直説法現在を混用、複数は接続法現在と直説法現在を混用、命令法複数形は演説や説法に限って登場)

標識

(不定法)

  肯定 否定 肯定 否定 肯定/否定
単数 Pare Não pare Para Não para Parar / Não parar
複数 Parem Não parem Parem / Param (Parai) Não parem / Não param (Não parai)  

複数の強い命令(親しい者への命令)に直説法3人称複数を用いることについてブラジルの国語文法では、通常誤り(必ず接続法現在を使用すること)とされるが、口語ではしばしば登場する(別項参照)。

勧誘 Paremos Não paremos      

勧誘には、Vamos + 不定詞 を用いることが圧倒的に多い。

命令法と直説法現在の混用について

Quando o sol bater na janela do teu quarto, lembra e vê que o caminho é um só.  太陽が君の部屋の窓を叩いたら、思い出すがいい、そして見るがいい、道はただひとつなのだと。

Legiao Urbana というMPBバンドの曲、"Quando o sol bater na janela do teu quarto"(1989年発表)の一節ですが、こういうのを見ると「やっぱり2人称あるんじゃないか?」と思わされます。

  • 「君の部屋」を "o teu quarto" と言っている
  • "lembra" "vê" というように命令法(と見える形)で命令している

ポルトガル人に見せれば、聞き手に向かって2人称で話す形であると、問題なく理解される文だと思われます。

しかし、"lembra" "vê" は、直説法現在三人称単数でも同じ形なので、これだけをもって判断するのは?

この点について、池上岑夫教授らの研究では、「ブラジルでは新しい三人称のTuと呼ぶべきものが生じており、そのために、強い命令、親しい者への命令には直説法現在の三人称活用が使用される」という説が挙げられています(詳細はこちら)。

とりあえず、現象面を確認すると、そもそも命令法の形の作り方として、「直説法現在の二人称活用から語尾のsを取り除いたもの」というルールがある一方で、大半の動詞では、「直説法現在二人称単数の活用形と直説法現在三人称単数の活用形の違いは語尾にsがあるかないか」となっています。つまり、直説法現在二人称単数の活用形から語尾のsを取り除いた命令法(単数)の形と直説法現在三人称単数の活用形とは、大半の動詞で「結果的に同形」ということになるのです。

自分の仮説:

ステップ1: 複数に対してよりも単数に対してのほうが、一般に命令の頻度が高く、実質同形の命令法と直説法現在三人称単数の間の混同が進んだ。同じ形であるがゆえに、「敢えて『命令法』という特別な形を用いるべきだ」「用いているのだ」という意識が薄れていった。

ステップ2: 「命令法(単数)の形は直説法現在三人称単数の形と同じだ」「命令は直説法現在三人称でいいんだ」という意識が広まり、複数の相手への命令にも援用され、直説法現在三人称複数が用いられるようになった。

ステップ3: それが一般的な言葉遣いとして定着するのと裏返しに、本来の命令法複数形( "-ai"など)について、「周りでは誰も言ってないけど、聖書には出て来る、、、つまりは文語的な命令だな」と使い分けを考えるようになった。

いつ、どの辺の人が、どう変えたのか、文献に記録はあるか、、、それを確認しないことには、はっきりとモノを言うことはできませんが、充分にあり得る話だと思います。

 

どうやら「ホンモノの命令法」ではないらしいと考えさせられる事例

1.Conduzir (搬送する)

「オイ貴様!この荷物をソロカーバまで搬送せよ!」と言うときの「搬送せよ」は?

a. Conduza!   b. Conduz!   c. Conduze!  (文法的にはc、慣用的にはb)

 

2.Fazer (する) 

  > Fazer (um / o) favor de〜) (「お願いだから〜してちょうだい」)

軽食屋で、「ねぇ、大将!お願い(注文したいんだけど)!」の「お願い!」は?

Ô, chefe! ??????

a. Faça favor!  b. Faz favor!  c. Faze favor!  (これも文法的にはc、慣用的にはb)

否定なら接続法?

「そんなことすんなよー!」

a. Não faça isso, não!   b.  Não faz isso, não!    c. Não faze isso, não!  (文法的にはa、慣用的にはb)

 

3.Trazer (もってくる)

「コーヒー2つ頂戴よ!」と注文するには?

?????? dois cafezinhos para a gente, por favor. 

a.  Traga     b.  Traz   c. Traze  (文法的にはc、慣用的にはb)

まだまだ、ありそうですが、つまりは、「命令法を使ってるよ」と言い張るのなら、「c」を使ってる筈だろう?あと、「否定なら接続法」ってルールはどこ行ったの?というツッコミです。先ほど、大半の動詞で、命令法単数形と直接法現在三人称単数の活用形は結果的に同形と書きましたが、大半でない、例外的に違う形のものがどうか、と見ると、やはり直説法現在で言ってるじゃないか、ということです。「あれ、命令法って直説法現在の三人称単数と同じじゃなかったの?」とボケをかまされる余地はありそうですが。

さんざんリソースを費やした上で、ナンなんですが、少なくとも日常会話での(単数への)命令では、直説法現在の三人称単数を使って大丈夫(使われても、こだわらないほうが楽)というところで、どうでしょうか?

複数相手への命令は接続法だけか

ブラジルの国語文法などでは、複数の相手への命令は、相手が親しくても、強い命令でも(「本来の文法」で命令法が用いられていたはずの位置)、接続法現在3人称複数形を用いることとされています。実際、書籍、雑誌、テレビ、ラジオなどエディターのチェックが入るであろう場面では、ほとんどが接続法現在3人称複数に統一されています。

例えば、ブラジルではアメリカ経由か、日本の「戦隊モノ」などがよく(吹き替えで)放送されていますが、そこで登場する命令の台詞は接続法です:

  • Ataquem!  「攻撃(やっちまえ)!」(敵ボスが戦闘員に向かって命令)
  • Fujam!  「逃げろ!」(ヒーローが、巻き込まれそうな一般人に向かって)

それでは、直説法現在3人称複数は絶対に使用しないか、というと、そうとも言い切れないものがあります。言い間違い、あるいは誤用と片付けるとすると、「(少なくとも)表示上、複数相手への命令には強弱や親密度の区別がない」「単数にはそれがある」などと、例外の多い話になり、すっきり感が薄くなります。とりあえず、ふとした拍子に口端にのぼることはありますので、これまた、言われてもビックリしないでください。

"Levantam-se. Levantem-se. Tem gente morrendo (de malária) no país dele hoje" 「立ち上がって!彼の国では今もマラリアで死んでいく人がいるの」 タンザニアのマラリア撲滅運動に寄付を行なったシャロン・ストーンの演説を報じた、有力紙"O ESTADO"の記事(2005年1月28日、リンク先が消えたり、「熱心なエディター」によって修正されるかもしれませんので、一応保存しておきます)。現場では、"Just stand up."と繰り返していたようですが。

特殊な命令

不定詞

上官が部下に向かってする命令や道路標識に、不定詞が用いられることがあります。

  • Atacar!  攻撃!
  • Parar  (一時)停止
  • Não estacionar  駐車禁止

直説法過去3人称単数

ゲームやスポーツの「はじめ」「おわり」という合図に限って、直説法過去3人称単数形が用いられることがあります。「はじまったゾ(動かないと遅れるぞ)」「終わったゾ(これ以上やったら反則だぞ)」といったニュアンスを感じます。

  • Começou!  はじめー!
  • Terminou! 糸冬ー了ー!
  • Parou!    止まれー!

関連ページ>>

接続法現在

命令法

直説法現在

連絡先など:

Mail

Blog

趣味の押し付け

最近の更新:

<PVI 更新> ポルトガル語動詞活用確認ワークシート(エクセル版)をアップデート(活用の登録漏れ修正)しました。 2006/11/15

< ラジオ局 > ポルトガル語のサンプルということで、ネット放送のリンクを集めはじめました。 2005/6/8

< Cafezinho > ブラジル人、なにかというと、「コーヒー飲みに」出かけます、そのココロを考察したコラムを対訳つきで(ポルトガル語・トピック)

< 発音・綴り字読みの集中攻略 > ポルトガル語の発音・綴り字読み関係のまとめコーナーを集中工事中(ポルトガル語・発音)

 

 

Copyright (c) 2005-2006 Fala-se.com. All Rights Reserved.

当サイト記載事項の無断転載、コピー、フレームに取り込むなどの引用的リンクを禁止します。語学学習情報提供を目的として公開しているページですが、現状、基本的には知り合いにのみに知らせています。掲示板等へのURL貼り付け(h抜き等を含む)はご遠慮ください。内容の正誤については極力留意し、逐次訂正を行ないますが、情報が不正確であることによって生じた損害について、責任を持つことはできません。