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2.人称
2−2.人称は仮面ピボットテーブルの工夫「文法上○人称で意味上△人称」という説明に無理が生じるのは、「話し手、聞き手、その他」という「言語活動上の役割」と、「主語と動詞活用の対応」という「文法上の一現象」を並列・直列的に捉えようとすることにあると思われます。すなわち、、、
これでは、vocêなどの何が何にに跨っているのかがわかりませんので、「文法上の人称」と「機能・役割」をダブルスケールにして、
のように説明されることもあります。いわゆる「人称代名詞」(そうでない考え方については後述)に限る話であれば、分かりやすい提示方法であり、私もよく使いますが、前のページで挙げた、
と本人に向かって訊ねるときの、o professor, Mariaなど、そして、そうではない(他人である)o professor, Mariaの置き場所も考えてやろうとすると、実に困ります。
いずれにせよ、
という「文法上3人称=話し手」の"o papai" にいたっては、どの表にも収められません。 また、こうした説明は、前述した「再定義の試み」と同じく、人称の定義をズルズルにしてしまいそうです。 ただ、ダブルスケールとして提示するということは、文法上の役割である人称と、機能、すなわち言語活動上の役割(話し手・聞き手・その他の別)とを、それぞれ独立した基準であると説明しようとしているとも言えそうです。 この点をさらに分かりやすくするために、「言語活動上の役割」を担う機能による区分(区分らしく「自称詞・対称詞・他称詞」と呼ぶことにします)と、「文法上の役割」としての人称を、縦横軸に置くと、次のように見ることができます。
つまり、
といった構造が、この状況を説明するために最も適当であると考えられます。você, o senhor などを、名詞(3人称)の一部と見るのがポイントです。これらをeuやtuなどとひと括りにして「人称代名詞」としようとすると、「原則は2人称=対称詞だが、、、」のように原則と例外の列記が必要となり、「3人称で2人称」という混乱に立ち戻ることになります。 仮面の付け替え「人称」という呼称は英語ではperson、ポルトガル語ではpessoa、語源のラテン語ではpersonaであり、もともと「仮面」を意味しました。ユングが定義したような「社会的な立場を演じるための仮面」と合致する必然性はありませんが、実際には、かなり当てはまるように見えます。例えば、あるひとりの男性がいて、彼の実体・思考如何に関わらず、親にもらったAntônioという名前で役所に登録され、Antônioという名前で仕事をし、税金を払い、恋をして、結婚し、子をなし、、、。その間、彼はどれだけ、3人称の仮面を被ることでしょう。
周りの人からも、você, o senhor, ele, o Antônio, o Toninho, o professor, あるいはo Bigode,,,様々な仮面を被せられることでしょう。 このように、多様な仮面の存在、特に他称詞の自由度の高さゆえに、tuやvósが使われなくてもコミュニケーションが成立するとも言えるでしょう。「tuを使わない」「かわりに3人称のvocêを使う」などと説明されてビックリするのは、「2人称=他称詞(それ以外の組み合わせは尋常ではない)」という前提から離れられていないからです。 補足: 主格以外でも
「何かを教えようと思って書いてるわけじゃぁねぇんだ」という池上教授の照れ笑いが目に浮かぶような例文であることは置いておいて、、、また、現場(特に話し言葉)では、a vocês の意味では、a vocês を用いることが多くなっていますが、文法的には充分ありえることなので、見過ごすわけにはいきません。 これを、「自称詞・対称詞・他称詞」の定義を使わずに説明しようとすると、主格のときと同じく、2における lhes は「文法上3人称だが意味上2人称」である、といった話になります。一方、「自称詞・対称詞・他称詞」を踏まえれば、vocês も eles も「3人称であるから、間接目的格(与格)には lhes を用いる」と言うことに何の憚ることもなくなります。
においても、事情は同じです。 さて、ここで紹介した「自称詞・対称詞・他称詞」という考え方について、「意味上の○人称」ということを言い換えただけでは、というツッコミがありえそうです。ある意味その通りですが、ポイントとして「人称」は文法修辞上の機能を表す呼称であると限定することに意義があるのであって、言語活動中の役割を説明するのに「人称」の助けを借りないですむようにしようということは、とても大事です。 また、この「自・対・他」という区分は、位置関係の話にもすっきりとあてはまります(「人称」によって決まるわけではありません)。
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