冠詞の性・数
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冠詞とその性・数

冠詞は、名詞が示す範囲を限定することを示し、広義の形容詞のひとつ(ふたつ)ともいえるものです。冠詞には、「ある特定の」という意味限定を行なう定冠詞と、個体を限定せずに提示する(「どれとは言わないが、存在する、ある○○」といった意味合いを持つ)不定冠詞があります。全く限定・指定されない物事については、冠詞を付けません。

冠詞は、指定しようとする名詞(および形容詞)の直前に置き、形容詞と同様に「修飾しようとする名詞の性・数に合わせた形」をとります。

定冠詞  不定冠詞  冠詞の機能  代名詞的用法  使い分けの例

定冠詞

  男性名詞のとき 女性名詞のとき
単数 o a
複数 os as

使用例

  男性名詞のとき 女性名詞のとき
単数 o carro (その車) a camisa (そのシャツ)
複数 os sapatos (その靴) as mangas (その袖)
形容詞付きのとき 男性名詞のとき 女性名詞のとき
単数 o carro vermelho (赤い車) a camisa vermelha (赤シャツ)
複数 os sapatos vermelhos (赤い靴) as mangas vermelhas (赤い袖)

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不定冠詞

  男性名詞のとき 女性名詞のとき
単数 um uma
複数 uns umas

使用例

  男性名詞のとき 女性名詞のとき
単数 um carro (ある一台の車) uma camisa (ある一着のシャツ)
複数 uns sapatos (いくつかの靴) umas mangas (いくつかの袖)
形容詞付きのとき 男性名詞のとき 女性名詞のとき
単数 um carro vermelho (赤い車) uma camisa vermelha (赤シャツ)
複数 uns sapatos vermelhos (赤い靴) umas mangas vermelhas (赤い袖)

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冠詞の機能

冒頭に紹介したように、名詞の指し示す範囲の限定が冠詞の主な機能ですが、単数と複数では、特に不定冠詞の機能に差があります。無冠詞の状態とあわせて、確認します。

criança (子供)

単数 複数
無冠詞 Criança quer jogar.  子供(というもの)は遊びたいものだ。 Vi crianças lá fora.  オモテに(複数の)子供がいたよ。
不定冠詞 Vi uma criança lá fora.  オモテに子供がいたよ。 Vi umas crianças lá fora.  オモテに何人かの子供たちがいたよ。
定冠詞 A criança vendia chocolates.  その子はチョコレートを売っていた。 As crianças vendiam chocolates.  その子たちはチョコレートを売っていた。

↑といった例文から機能をまとめると↓

  単数 複数
抽象 無冠詞  
具体 非特定 不定冠詞 無冠詞
特定 定冠詞 定冠詞

通常複数の不定冠詞と分類されているuns umasは、「いくらかの」といった意味を表す。英語のsome certain フランス語の quelques certains などに相当するようなもの。

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代名詞的用法

直接目的格代名詞(三人称)は定冠詞と同形になる。別の背景から成立したという考えもありますが、とりあえずここでは(折角の同じ形でもあるので)定冠詞付きの名詞から名詞が省略されたと考えて紹介しておきます。

  • Você conhece Roberto?  (ホベルトのこと知ってる?)
    • Não o conheço, não.  (いいえ、彼のことは知りませんね。)
  • Não me perdoa?  (私を許してくださらないの?)
    • Não a perdôo.  (私はあなたを許しません。)

不定冠詞も、代名詞的に用いることができます。こちらは、相当、数詞っぽいのですが、英語で one が使われるようなケースです。

  • Pega duas garrafas de cerveja para mim.  (オレのために、ビールを二本持ってきてくれ。)
    • Agora, só tem uma.  (今は、一本しかないよ。)
  • Ideologia,,, Eu quero uma para viver...  (イデオロギー、、、生きるために、オレも一丁は欲しい−Ideologia / Cazuza MPB 歌謡曲の歌詞)
  • Agora você tem duas opções:  uma é contar tudo para mim, e a outra é morrer.  (あなたには2つの選択肢がある: ひとつは全部私に話すこと、もうひとつは死ぬことだ。)

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使い分けの例 (桃太郎風の文から)

Era uma vez, um casal de velhinhos morava ao pé de uma montanha.  Todos os dias, o bom velhinho ia para a roça enquanto a velhinha ia ao rio para lavar roupas.  Em uma manhã, quando o sol estava mais radiante que nunca, a velhinha viu um pêssego enorme descendo as águas do rio... むかしむかし、ある山のふもとに、一組の老夫婦が住んでいました。毎日、善良なおじいさんは畑に出て、おばあさんは川へ洗濯に行っていました。太陽がいつになく強く照り付けていたある朝、おばあさんはひとつの巨大な桃が川の水を下ってくるのを見ました。
「おじいさんは山へ柴刈りに」と言いたいところですが、柴(小枝)を刈ってきて商売にするということから説明しなければならなくなりそうなので、ありがちなポルトガル語話者にとってイメージしやすそうな農業耕作に代えてしまっています。また、和文は冠詞の機能を意識して、若干直訳風にしてあります。
era uma vez 「むかしむかし」(決まり文句)< 「かつて一度(以下のようなことが)ありました」

uma vez 一度、一回 (不定冠詞)

um casal de velhinhos 一組の老夫婦

um casal ある一組のカップル(不定冠詞)

この話では初出。そしてこれから話題にしようとしている。

de velhinhos 老人の(老人によって構成される)(無冠詞)

ここで話題にしているのは「カップル」であって、どういうカップルなのかという説明目的でしかない「老人」を限定する必要はないから。

ao pé de uma montanha ao pé 足元に、下の方ですぐ近くに a は前置詞(〜に)、o が定冠詞

山のふもと、中腹、頂上など、それぞれ特定の場所、との考えから

de uma montanha ある山の (不定冠詞)

初出で特定しない(が、この話の舞台として話題になる)山のことなので

todos os dias 「毎日」(決まり文句)(定冠詞)
o bom velhinho 「(その)善良なおじいさん」 (定冠詞)

2回目、「老夫婦のうちのおじいさんのほう」といったニュアンス

a roça 「畑」(定冠詞)

おじいさんが耕す特定の畑ということで

a velhinha 「(その)おばあさん」(定冠詞)

「老夫婦のうちのおばあさんのほう」といったニュアンス

ao rio 「川に」(定冠詞)

a は前置詞

おばあさんが洗濯に行く特定の川ということで

lavar roupas 「衣服を洗う」(無冠詞)

まるで限定しない

Em uma manhã 「ある朝に」(不定冠詞)

いつとは言わないが、ここで話題になる朝。

o sol 「太陽」(定冠詞)

o sol 太陽 a lua 月 a terra 大地(地球)などは、必ず定冠詞付き

um pêssego enorme  「(ひとつの)巨大な桃」(不定冠詞)

初出で、ここから話題にする桃

as águas 「水(川を流れる水)」(定冠詞)

特定の川をその時に流れていた特定の水と限定。動きのある水は複数形で言うことがある。

do rio 「(その)川の」(定冠詞)

do は前置詞 de + 定冠詞 o

おばあさんが洗濯に行っている特定の川ということ

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